
はじめに
「何か新しいことを始めたいけれど、どうも最初の一歩が重い…」「毎日が同じことの繰り返しで、少し物足りない…」
そんな気持ち、心のどこかで感じていませんか?
それは決して“怠けている”のでも、“気力が足りない”のでもありません。むしろ、とても自然な心の反応です。
年齢を重ねるほど、「変化に慎重になる」ことは、脳や体の仕組みにもとづいたごく当たり前のことです。だからこそ、“動きたい気持ち”があっても、“動き出す”にはもう少し工夫が必要なのです。
そこで、今回ご紹介したいのが「モメンタム」という考え方です。
モメンタムって、どんな「勢い」のこと?
「モメンタム」という言葉は、もともとは物理の世界で「動いているものが持つ勢い」を意味します。これを私たちの心や行動に当てはめると、次のように考えることができます。
「一度動き始めると、自然と次の行動につながっていく勢い」
例えば、こんな経験はありませんか?
- 散歩に出かけたら、ついでに素敵な花屋さんを見つけたくなった。
- 本を読み始めたら、誰かにその話を聞かせたくなった。
- 窓を開けて部屋の空気を入れ替えたら、ついでに部屋も片付けたくなった。
このように、**「小さな行動が、次の行動へと自然に引き出してくれる力」**こそが、モメンタムなんです。
高齢者にとってモメンタムが大切なわけ
年を取ると、「体を動かすのが億劫(おっくう)」「なかなかやる気が出ない」と感じることが増えるかもしれません。でも、それは「やる気がない」わけではなく、ただ**「勢いが一時的に止まっているだけ」**なのかもしれません。
モメンタムは、いきなり大きなエネルギーを出す必要はありません。たとえば、次のようなごく小さな習慣から始めることができます。
小さなモメンタムの例:
- 朝起きたら、まずカーテンを開けて、太陽の光をたっぷり浴びる。
- お湯を沸かす間、深呼吸を3回してみる。
- ポストまで、手紙を出しに行ってみる。
こうした「小さな行動」を毎日続けることで、やがて心と体に心地よい**「リズム」**が生まれてきます。これこそが、モメンタムが育っていく土台になるんです。
モメンタムを味方につける3つのステップ
では、どうすればモメンタムをうまく使えるようになるのでしょう?簡単な3つのステップをご紹介します。
1. 小さく始める
「毎日、新聞を1ページだけ読む」など、「これならできそう!」と思える簡単な行動からスタートしましょう。
2. 続けて流れをつくる
「今日もできた!」という達成感を毎日味わうことが、行動の**「流れ=習慣」**をつくる秘訣です。無理なく続けられることが大切です。
3. 外に出るきっかけを持つ
小さな流れができてきたら、週に一度でもいいので、外へ出る楽しみな予定を一つ加えてみましょう。買い物でも、趣味の集まりでも、地域のお祭りでもいいんです。
モメンタムがもたらしてくれる変化
モメンタムが生まれると、日々の暮らしにこんな良い変化が起こるはずです。
- 自分で考えて動けるようになる(自主性)
- 外の世界とつながり、人との交流が生まれる(交流)
- 「生きがい」や「自分の役割」を感じられるようになる(自己肯定感)
「どうせ何も変わらない」と感じていた毎日に、きっと新しい風が吹き始めるでしょう。
おわりに
モメンタムは、特別な人だけが持つ力ではありません。誰の中にもそっと眠っている、**自然でやさしい「行動のエネルギー」**です。
だからこそ、まずは今日、ほんのひとつだけ。靴を履いて外に出る、窓を開けて深呼吸する、誰かにひと声かける――
その小さな動きが、やがて大きな流れをつくり出します。
あなたの中にあるモメンタムが、これからの日々に、もう一度ワクワクと生きるリズムを運んでくれますように。
新しい一歩を、どうかご自身のタイミングで踏み出してみてください。